「薬膳料理を教えているんですね?」
よく聞かれるこの質問に、私はいつもこう答えます。
「いいえ。私が教えているのはお料理ではありません。中医学という『自分を測るものさし』を教えています」
薬膳はお料理のジャンルの一つと捉えられることが多いのですが、実はそうではありません。
「その時の自分に合った食材を、自分の意志で選び取る力」。
その知恵と行動のことを、私たちは「薬膳」と呼んでいます。
ですから、たとえ一杯のお茶でも、コンビニのお惣菜でも、大好きなスイーツでも。 そこに自分の心と体に寄り添った「選択」があれば、それは立派な薬膳なのです。
薬膳の先生というと、ちょっぴりこだわった、ストイックな食事をしていて、ナチュラルな暮らしで…
自分とは、少し遠い世界の話かな。
そんな風に想像する方も多いかと思います。
でも、私の日常は実はそんなことはなくて、子供の活動に時間を吸い取られ、少し散らかったお家でなんとか自分と家族の居場所を作り、犬と散歩しながらゴロゴロと暮らす日々。
SNSで流れてくるような、どこを切り取っても綺麗なキラキラした日常とは程遠いです。
そんな日常で、私がなんとか大切にしている想いがあります。
大切にしているのは10%の選択権
それは、「10%の選択権」を持つこと。
100%完璧な暮らしや食事を目指すことは、とうの昔にやめました。 けれど、どれほど慌ただしい一日であっても、
「今日は春だから、柑橘系の香りで気を巡らせよう」
「今から勉強だから、疲れがたまらないようにジャスミンティーを飲もう」
「生理中だから、血を補う食材を少し多めに摂ろう」
そんな風に、自分の暮らしの中にたった10%だけ、自分の意志を通すようにしています。
それさえできれば、「今日も私は、私を大切にできた。大丈夫」と、自分を信じられるようになるのです。
講師である私自身が完璧ではないので、生徒の皆さんにも完璧は求めません。 むしろ、日々を一生懸命に生きている皆さんの暮らしを、私はいつも尊敬の眼差しで見つめています。
「素敵な暮らし」や「完璧な食事」を求める方には、私の薬膳はあまり参考にならないかもしれません。
それでも、どんな環境にいる人にも、薬膳の知恵は一生の宝物になると確信しています。 だからこそ、敷居をできる限り低くして、皆さんの当たり前の日常に溶け込むような薬膳を、これからもお伝えしていきたいと思っています。



